隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました
ムギくん、なんで返事してくれないの?
なんか言ってよ。
私と話したく無いの? 怒ってるの? ねえ、こんなの……。こんなふうに一緒にゲームしたくないよ。
気づいたら、悲痛な声色で弱音を吐いていた。
クエストが終わり、別エリアのクエストへと転送される。その日のデイリークエストを終えるとムギちゃんはログアウトした。
目の前には、クエストのゲート前でログアウトされて魂が抜けた状態のアバターのムギちゃんが立っている。
まるでマネキンのようなムギちゃんの姿に、思考が止まる。
「……嘘?」
いつもなら、ムギちゃんは自宅に戻ってからオフになる。クエストで減ったアーマーの耐久値を戻すためにもハグだってするのに。ゲームのクエストをこなして、すぐに落ちることなんてなかったのに。
ムギちゃんは、まるで義務のようにプレイしてそしてログアウトした。
気づくと五百城の家のチャイムを押していた。近所迷惑も顧みず、何度も何度もしつこいぐらいに押して、でもなんの反応も返ってこない玄関先で、ようやく気づいた。
五百城はゲームの同居人。
ゲームの中でプレイヤーとして同じ時間を過ごし、同じ空間でゲームをするだけの関係。
私たちはゲームの同居人でしかない。
だからこんなふうに事務的にプレイすることって至極当然なのだ。
今までが、特別だっただけ。
五百城の優しさに甘えて、ずっと寄りかかって、すぐそばで一緒にいられることが当たり前で、
いつしか、ゲームもリアルも五百城がいた。
だから、こんなふうに突き放されるなんて思ってもなかった。
五百城と一緒にいる時間が、ずっと続くと思っていたから。
特別だなんて思ってなかったから。