隣の年下くんがダンジョンの同居人につき、リアルでも溺愛始まりました
 私はムギちゃんの可愛いところだけを愛でていたわけじゃない。ムギちゃんそのものが好きなのだ。そんなムギちゃんの中の人を信じられないなんて、同居人失格だ。

 それに……、この廃課金ゲームで、ランキングインすることに命かけてるようなゲーマーに、彼女を作る暇があるはずがない!!

 すぐわかることなのに、盲点だった……。

「信じるよ。ムギちゃんのこと。ほんとに酷いこと言って、ごめんね」

 すると、五百城は、そっと私の頬を大きな手で包み込んだ。

「何度も言ってるのに……。僕はムギちゃんじゃなくて、ムギくんです。
 この顔、よく見てください。猫耳生えてませんよね?」


 五百城を見上げる。
 最近見る五百城は眼鏡をかけていないことが多い。
 というかそもそも五百城は目が悪いわけではなく、あのメガネは人避けのためらしい。今はメガネがないので、頬の肌のキメさえわかるほどだ。

 薄暗いせいか、五百城の瞳に入り込む光や鼻筋の高いところに入る輝きや、上唇の先のツンと尖った場所が光を放っているのがわかる。

 五百城の肌は、暗がりの中でも発光するのか。なんて感心しつつ眺めた。
 彼の柔らかな黒髪を撫でる。
 確かに耳はない。あっても可愛いと思うけどな……。

「猫耳は、……生えてないね」

 見たままの通りを告げると、五百城がこくんと頷く。

「これが僕です。だから、間違えないでください。
 ちゃんと僕を見てください」

 ――そうだ。
 これからはちゃんと隣人であり、ゲームの同居人である彼のことを見なくては。だって、彼は私の大好きなムギちゃんの中の人なんだから。

「じゃあ、……今からログインするんで、今日のクエスト一緒にやりません?」と、”ムギくん”は、満足げに唇を引き上げて笑った。

< 92 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop