シンデレラ・スキャンダル
「龍介さんがめちゃくちゃ嬉しそうに話すんだよ。龍介さんって落ち着いている感じに見えるけど、なんでも顔に出るタイプだから。感情もストレートだしね。まあ、飛行機で出会った子が泊まってるって聞いたときは、俺たちも結構びっくりしたけど」

「そう、だよね」

「話を聞いてさ、運命ってあるんだなって思った」

「運命?」

「綾乃、友達と来るはずだったんでしょ?」

「……うん」

「それが一人になって、龍介さんと二度も偶然出会って。龍介さん、急に決めたから飛行機キャンセル待ちだったんだよ。で、キャンセルが出たからあの飛行機になったの。それ綾乃の友達分ってことじゃない?」

そういえば、龍介さんもそんなことを言っていたかもしれない。卓也が来なかったから、龍介さんがあの飛行機に乗ってきて、そしてわたしの隣に座った。隣の席だったから話すことになって、怖がるわたしに帽子を貸してくれた。

帽子を被っていたから、あのスーパーでわたしを見つけて助けてくれた。なにかが一つでも違っていたら、わたしたちは出会わなかったかもしれない。こんな風に一緒に過ごすことなんて、なかったかもしれない。

これが運命というなら、どうしてわたしたち二人なのだろう。どうして、やっと好きになれた人が龍介さんなのだろう。神様が与える試練は、いつだって苦しい。わたしはまた大切な人を失ってしまうのだろうか。

失いたくない。傍にいたい。そう思えるのに。

「綾乃、友達って男でしょ? 彼氏?」

普通の会話で聞いているように見せかけて、目が嘘つくなよと言っているのは絶対に気のせいではない。

「どうして?」

「違う?」

にっこり笑う優くん。やっぱり、優くんは龍介さんとタイプが全然違う。龍介さんは古風で優しくて穏やかな人。真っ直ぐで純粋だから、彼に嘘はつきたくないと思う。

優くんは鋭くて駆け引きも上手いうえに、嘘をつかれてもきっと全て見抜いてしまう。

「……元、彼氏」

「龍介さんってさピュアな人だけど鈍感じゃないから、綾乃が男と来るはずだったって気付いていると思う」

「……うん」

「でも、龍介さんの性格上、綾乃を問い詰めるとかしないだろうし。気になってても全てを受け止めようとする人だから」

確かに、龍介さんはそういう人。心が広すぎて、神様か仏様じゃないかと思うほど。

「その元彼ってさ……」

「ん?」

「どんな人? 龍介さんよりも格好いいの? いい男なの? もう復縁とかしないよね? 綾乃の気持ちはさ——」
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