シンデレラ・スキャンダル
「モールは日本人がそれなりにいると思うから、綾乃ちゃんと手繋ぐのはここまでな」
「ああ」
畑中さんの冷静な声に、心臓が冷える。龍介さんの指から、ゆっくりと力が抜けていくのが分かった。離れたくない。そう願って握り返そうとしたけれど、彼の立場を思い出して、わたしも指の力を緩める。
するり、と彼の手が離れていく。最後に指先だけが触れ合って、それも途切れた瞬間、急に手のひらが寒くなった。
「……ごめんね」
小さく呟く彼の声が、さっきまでより遠く聞こえる。
今は、記者に気をつけるだけでは足りないらしく、いつの間にかSNSに写真があげられてしまうこともあるのだと畑中さんが教えてくれる。事実がどうであれ、憶測で様々な情報が飛び交うと、それを信じてしまう人もいる。そう畑中さんが言うと、龍介さんが小さく深い溜息をついた。
「週刊誌とか、ネットとか……すごいんだよね。なるべく見ないようにはしてるんだけど、あることないこと書かれていて」
龍介さんは前を見据えたまま、眉根を寄せて苦しそうに話す。
「そう、なんですか」
「俺のなんてすごいよ。洗脳とか薬物とか……更生施設に慰問すれば、RYUはドラッグをやっているから、警察からの最終勧告でその慰問をしなきゃいけなかったとか」
正直に言えば、わたしは彼のアーティストの部分なんて、ほとんど知らない。わたしが知っていることは、龍介さんが優しくて真っ直ぐで涙もろい繊細な人だということ。
「ああ」
畑中さんの冷静な声に、心臓が冷える。龍介さんの指から、ゆっくりと力が抜けていくのが分かった。離れたくない。そう願って握り返そうとしたけれど、彼の立場を思い出して、わたしも指の力を緩める。
するり、と彼の手が離れていく。最後に指先だけが触れ合って、それも途切れた瞬間、急に手のひらが寒くなった。
「……ごめんね」
小さく呟く彼の声が、さっきまでより遠く聞こえる。
今は、記者に気をつけるだけでは足りないらしく、いつの間にかSNSに写真があげられてしまうこともあるのだと畑中さんが教えてくれる。事実がどうであれ、憶測で様々な情報が飛び交うと、それを信じてしまう人もいる。そう畑中さんが言うと、龍介さんが小さく深い溜息をついた。
「週刊誌とか、ネットとか……すごいんだよね。なるべく見ないようにはしてるんだけど、あることないこと書かれていて」
龍介さんは前を見据えたまま、眉根を寄せて苦しそうに話す。
「そう、なんですか」
「俺のなんてすごいよ。洗脳とか薬物とか……更生施設に慰問すれば、RYUはドラッグをやっているから、警察からの最終勧告でその慰問をしなきゃいけなかったとか」
正直に言えば、わたしは彼のアーティストの部分なんて、ほとんど知らない。わたしが知っていることは、龍介さんが優しくて真っ直ぐで涙もろい繊細な人だということ。