シンデレラ・スキャンダル


龍介さんの泊まるレンタルハウスに着くなり、彼はわたしの手を引いて階段を上がっていく。

「綾乃ちゃんの部屋、先に案内するよ」

「ありがとうございます」

「余ってる部屋だから、そんなにいい部屋じゃないけど」

「いえ、泊めていただけるだけでありがたいですから。そんなこと、おっしゃらないでください」

「……そうですか」

わたしの答えを聞いた彼は笑っている。どうして笑っているのか聞いてみると、言葉遣いが面白いと言い出す。

「お嬢様っぽいよね」

「……全然、そんなことないですよ」

昨日は上がることのなかった二階は、五つの部屋に分かれていた。そんなにいい部屋ではないと言って案内された部屋には、ベッドはもちろんのこと、ソファまである。

その部屋のドアを開けて、わたしを促しながらも、どこか納得のいかない顔をする龍介さん。まだ「女の子をここに泊めて俺がメインルームっていうのは」と呟いている。

「もう、龍介さんってば」

「だってさ」

さっきも宿泊代のことで「払う、払わない」の押し問答をしたところ。宿泊代なんて絶対に受け取らないと彼は強く首を横に振る。
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