シンデレラ・スキャンダル
目の前にいる彼と一緒に過ごせば過ごす程に、日常にはなかった色彩に満ちたその時間が、わたしの目を眩ませる。わたしは自分自身を見失い始めているのかもしれない。このまま、彼の光に飲み込まれてしまってもいいと、心のどこかで願っている自分に気が付いて、わたしはそっと息を飲んだ。
ピアノの音がふと止んで、龍介さんと上原さんが目を合わせた。すると龍介さんが立ちあがり、代わりに別の男性がピアノの席に座る。龍介さんがどこへ行くのかと目で追うと、彼はマイクを手にして微笑んだ。
その場にいたみんなが自然とそこを囲むようにして集まっていく。みんなが集まったことを確認すると、三人は目を合わせて奏で始めた。
マイクを持った彼が、ふっと息を吸う。次の瞬間、部屋の空気が震えた。響き渡ったのは、今まで聞いたこともないような、甘く、力強く、そして少し掠れた歌声。
ビートルズの誰もが知る名曲。それなのに、まるで初めて聴く曲のように、その声が鼓膜を、心臓を直接揺さぶってくる。目を閉じて、微かに微笑みながら歌う彼の横顔は、さっきまではしゃいでいた姿とは別人で——。
胸が、苦しい。勝手に高鳴る鼓動を抑えようと、わたしは無意識に胸元の服を握りしめていた。
ピアノの音がふと止んで、龍介さんと上原さんが目を合わせた。すると龍介さんが立ちあがり、代わりに別の男性がピアノの席に座る。龍介さんがどこへ行くのかと目で追うと、彼はマイクを手にして微笑んだ。
その場にいたみんなが自然とそこを囲むようにして集まっていく。みんなが集まったことを確認すると、三人は目を合わせて奏で始めた。
マイクを持った彼が、ふっと息を吸う。次の瞬間、部屋の空気が震えた。響き渡ったのは、今まで聞いたこともないような、甘く、力強く、そして少し掠れた歌声。
ビートルズの誰もが知る名曲。それなのに、まるで初めて聴く曲のように、その声が鼓膜を、心臓を直接揺さぶってくる。目を閉じて、微かに微笑みながら歌う彼の横顔は、さっきまではしゃいでいた姿とは別人で——。
胸が、苦しい。勝手に高鳴る鼓動を抑えようと、わたしは無意識に胸元の服を握りしめていた。