シンデレラ・スキャンダル
零れる涙はわたしの頬を伝うことなく、龍介さんのシャツに吸い込まれていく。

「龍介さん?」

「……うん」

聞こえてくる彼の声は、泣いている声で。「ごめん」となぜか謝る彼の声を聞いて、わたしは思わず笑ってしまう。

「謝るのはわたしです。こんな風に泣いて」

「今までずっと我慢してたってことだよ。よかった……聞けて」

抱きしめられたままだと、彼の声が身体の中で響く。

「龍介さんのことも泣かしちゃいましたね」と言えば、泣いているはずの二人の体が揺れる。

耳に彼の息がかかって少しくすぐったい。

「俺、すぐ泣いちゃうんだよね」

「優しいからですよ」

「優しすぎてダメって言われるけどね」

「こんな風に話したのは……こんなに素直に話せたのは、龍介さんが初めてです」

わたしを抱き締める腕の力が弱まるのを感じて、顔を上げる。黒目がちな目が潤んでいる。頬には涙が流れた(あと)。彼の真似をしてその頬に触れて涙の(あと)を拭うと、目の前の瞳が柔らかく細められた。
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