恋愛アルゴリズムはバグだらけ!?~完璧主義の俺が恋したらエラー連発な件~

第20話 新しいアルゴリズムの萌芽

システム公開当日、火曜日の朝。



 俺──田中優太は、研究室で公開ボタンをクリックしようとしていた。



「みんな、準備はいいか?」



 チーム全員が俺の周りに集まっている。



「はい!」



 全員の声が揃った。



「それでは……Love Type Analyzer、正式公開!」



 俺はマウスをクリックした。



 画面に「System Online」の文字が表示される。



「ついに……やったんだ」



 公開から2時間後、俺たちは驚いていた。



「アクセス数が……1000人を超えてる」



 静香が画面を見ながら報告した。



「まだ午前中なのに?」



「SNSで拡散されてるみたい」



 大輔がスマートフォンを見せてくれた。



「『めっちゃ当たる恋愛診断見つけた!』とか『心理学的根拠があるから信頼できる』とか」



 想像以上の反響だった。



 昼過ぎには、アクセス数は5000人を突破していた。



「サーバーは大丈夫?」



「今のところ問題なし。キャッシュシステムが効いてる」



 俺は安堵した。



「でも、このペースだと……」



「今日だけで1万人を超えるかもしれませんね」



 歩美が予測した。



「すごいことになったな……」



「ユーザーからのメッセージも大量に来てます」



 静香が報告した。



「『彼氏との相性が分かって良かった』『自分の恋愛傾向を知れて参考になった』『アドバイスが的確で驚いた』」



 ポジティブな反応ばかりだった。



「中には『恋人ができました!』って報告もありますよ」



「本当に?」



 俺は嬉しくなった。



 しかし、午後3時頃から新しい問題が発生した。



「メールサーバーが限界に近づいてる」



 大量のユーザーからの問い合わせメールが殺到していた。



「『結果をもっと詳しく知りたい』『カップル診断機能も欲しい』『友達との相性も診断したい』」



 要望も予想以上に多様だった。



「嬉しい悲鳴だけど……対応しきれない」





「みんなで役割分担しよう」



 高橋先輩が提案した。



「システム監視は田中くんと私、ユーザー対応は山田さんと石倉さん、SNS対応は鈴木くん」



「分かりました」



 俺たちは急遽、カスタマーサポート体制を構築した。



「こんなに忙しくなるとは思わなかった」



 静香は丁寧にユーザーからの質問に答えてくれた。



「診断結果について、もう少し詳しく説明してほしいとの要望が多いです」



「確かに、アドバイスをもっと具体的にできるかもしれない」



「それと、『作った人たちはどんな人?』って質問も多いです」



「俺たちに興味を?」



「みなさん、このシステムを作ったチームに興味を持ってくれてるみたいです」



 夕方、予想外の連絡が来た。



「田中くん、大学のIT系メディアから取材申し込みが来ました」



 山本教授が連絡してくれた。



「取材?」



「学生が作った恋愛診断システムが話題になってるそうです」



 俺たちは顔を見合わせた。



「どうしましょう?」



「取材を受けるかどうか、みんなで決めよう」



 俺は提案した。



「私は賛成です。多くの人にこのシステムを知ってもらえます」



 静香が意見を述べた。



「心理学の正しい知識も広められるしね」



 歩美も賛成だった。



「俺も面白そうだし、やってみようぜ」



 大輔も乗り気だった。



「では、みんなで受けましょう」



 高橋先輩もまとめてくれた。



 その日の夜、俺たちは一日の成果を振り返っていた。



「最終的なアクセス数は……12,000人」



「診断実行数は8,500回」



「ユーザー満足度は95%」



 信じられない数字だった。



「みんな、本当にお疲れさま」



 俺はチーム全員に感謝を伝えた。



 その夜、俺と静香は久しぶりに二人だけの時間を過ごした。



「今日は本当にすごい一日でしたね」



「ああ。君がいなければ、ここまでうまくいかなかった」



「みんなで作り上げたシステムですから」



 静香は謙遜していたが、彼女の貢献は計り知れない。



「システムの成功も嬉しいけど……」



「けど?」



「君と一緒にプロジェクトができて、本当に良かった」



「私も同じ気持ちです」



 静香は微笑んだ。



「恋人として、パートナーとして、田中さんと過ごした時間は宝物です」



「これからも、一緒に歩んでいこう」



「はい。どんなことがあっても」



 俺たちは手を繋いだ。



 恋愛アルゴリズムを開発している間に、俺たちの関係も進化していた。



 翌日、さらなる展開があった。



「田中くん、企業からシステム導入の相談が来ています」



 山本教授が報告してくれた。



「企業から?」



「婚活サービス会社です。あなたたちのシステムを参考にしたいと」



 想像もしていなかった展開だった。



「どう思う、みんな?」



「面白そうですが……」



 歩美が慎重に意見を述べた。



「でも、商業利用となると責任も重くなりますね」



「そうだな」



 俺も考え込んだ。



「まずは今のシステムを改善して、もっと多くの人に使ってもらうことを優先したい」



「同感です」



 静香も頷いた。



「段階的に発展させていきましょう」



 その日、俺たちは新しい目標を設定した。



【Love Type Analyzer Next Phase】



短期目標(3ヶ月):

- システムの安定稼働

- ユーザーフィードバックの収集

- 機能改善



中期目標(1年):

- 新機能の追加(カップル診断、相性診断)

- モバイルアプリ版の開発

- ユーザーコミュニティの形成



長期目標(2年):

- 商業展開の検討

- 学術研究への貢献

- 国際展開の可能性





 一週間後、IT系メディアの取材を受けた。



「どのようなきっかけで、このシステムを開発されたのですか?」



 記者からの質問に、俺は正直に答えた。



「最初は、自分の恋愛の悩みから始まったんです」



「恋愛の悩み?」



「はい。データやアルゴリズムで恋愛を理解しようとして……」



 俺は自分の体験を語った。



「でも、一人では限界がありました」



 俺は続けた。



「心理学の専門家、デザインの得意な友人、プロジェクト管理のできる先輩、そして……」



 俺は静香を見た。



「ユーザーの気持ちを理解してくれるパートナー。みんなの力があったから完成しました」



「素晴らしいチームワークですね」



 記者も感心してくれた。



 取材後、俺は自分の変化を実感していた。



 最初は個人的な恋愛の悩みだった。



 それがチームプロジェクトになり、今では多くの人に影響を与えるシステムになった。



「恋愛アルゴリズム……こんな形で完成するとは思わなかった」



 でも、これが本当の意味での「完成」なのかもしれない。



 技術だけでなく、人とのつながり、チームワーク、愛情。



 全てが組み合わさって、価値のあるものが生まれる。



「これからも、みんなと一緒に成長していこう」



 俺は決意を新たにした。



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