恋愛アルゴリズムはバグだらけ!?~完璧主義の俺が恋したらエラー連発な件~

第19話 緊急事態:システムの最終テスト

チームの結束を取り戻してから二週間後。



 俺──田中優太は、ついに重要な発表をしていた。



「ウェブ版恋愛診断システム、来週火曜日に正式公開!」



 研究室のホワイトボードには、公開までのスケジュールが書かれている。



「最終テストは今週末。みんな、準備はいいか?」



「はい!」



 チーム全員が意気込んでいた。







「データベースの最終調整完了」



 俺がシステムの状態を確認する。



「心理学的診断ロジックも問題なし」



 歩美が理論面をチェックしてくれた。



「ウェブデザインも仕上がりました」



 静香も自信を持って報告した。



「UIも使いやすくなったぜ」



 大輔のデザインも完璧だった。



「全体統括から見ても、準備は万全です」



 高橋先輩が最終確認してくれた。







 土曜日の朝、俺たちは最終テストを開始した。



「まず、システムの負荷テストから」



 俺は同時に複数のアクセスをシミュレーションした。



「100人同時アクセス……問題なし」



「500人同時アクセス……正常動作」



「1000人同時アクセス……」



 その時、画面にエラーメッセージが表示された。



「System Error: Database Connection Failed」







「まずい……データベースがクラッシュした」



 俺は慌ててログを確認した。



「なんで? 設計では1000人同時でも大丈夫なはずだったのに」



「田中先輩、落ち着いてください」



 歩美が冷静に声をかけてくれた。



「問題の原因を特定しましょう」







「データベースのクエリ処理に問題があるかもしれない」



 俺は必死にコードを見直した。



「あ、これだ……診断結果の計算処理が重すぎる」



 心理学的分析を詳細にしすぎて、計算量が膨大になっていた。



「どうしよう……このままでは公開できない」







「みんなで解決策を考えよう」



 高橋先輩が提案した。



「システム面は田中くんと私が、心理学面は石倉さんが、ユーザビリティ面は鈴木くんと山田さんが担当」



「分かりました」



 みんなが役割分担して問題解決に取り組んだ。







「診断の精度を少し下げて、処理を軽くできませんか?」



 歩美が提案した。



「心理学的に見ても、20問で8タイプ分類なら十分な精度は保てます」



「でも、せっかく詳細な分析システムを作ったのに……」



「完璧を目指しすぎると、システムが破綻します」



 歩美の指摘は的確だった。







「それに、一般ユーザーにとっては分かりやすさの方が大切です」



 静香も意見を述べた。



「複雑すぎる診断結果より、シンプルで理解しやすい結果の方が喜ばれると思います」



「そうだな……」



 俺は自分の完璧主義が再び問題を起こしていることに気づいた。







「それに、公開後にアップデートすることもできるじゃん」



 大輔が現実的な提案をした。



「まずはシンプル版で公開して、反響を見てから機能追加すればいい」



「段階的リリース……」



「そうそう。いきなり完璧を目指さなくても」







 俺たちは診断システムの簡略化に取り組んだ。



「計算処理を3分の1に削減」



「でも心理学的根拠は保持」



「UI表示も軽量化」



「ユーザビリティは維持」



 チーム全員で効率的に作業を進めた。







 作業は深夜まで続いた。



「みんな、疲れただろう。今日はここで終わりにしよう」



 俺が提案したが、みんな首を振った。



「大丈夫です。最後までやりましょう」



 歩美が言った。



「俺たちのプロジェクトだからな」



 大輔も続いた。



「みんなでやれば、きっと解決できます」



 静香も励ましてくれた。





「お疲れさまです。夜食を作ってきました」



 静香が手作りサンドイッチを持ってきてくれた。



「ありがとう」



「みんなで食べると美味しいですね」



 深夜の研究室で、みんなで夜食を食べる時間は、疲れを忘れさせてくれた。







 夜食後、俺は新しいアイデアを思いついた。



「キャッシュシステムを導入しよう」



「キャッシュ?」



「同じ回答パターンの診断結果を保存しておいて、計算を省略するんだ」



「なるほど! 計算量を大幅に削減できますね」



 高橋先輩も理解してくれた。







「キャッシュシステム実装中……」



 俺は集中してコーディングした。



「データベース最適化も並行して進めます」



「UI側も軽量化完了です」



「心理学的検証も問題ありません」



 チーム一丸となって解決策を実装した。







 日曜日の朝、改修版システムの再テストを行った。



「100人同時アクセス……正常」



「500人同時アクセス……正常」



「1000人同時アクセス……正常!」



「やった!」



 みんなで成功を喜んだ。







「念のため、2000人でもテストしてみよう」



 俺は慎重にテストを続けた。



「2000人同時アクセス……正常動作」



「素晴らしい」



「これなら公開しても大丈夫ですね」





「全機能テスト完了」



「セキュリティチェックも問題なし」



「ユーザビリティテストも合格」



「心理学的妥当性も確認済み」



「システム全体、公開準備完了」







「みんな、本当にお疲れさま」



 俺はチーム全員に感謝を伝えた。



「この二日間、みんなで力を合わせて乗り越えた」



「一人じゃ絶対に解決できなかった」



 歩美が言った。



「チームって素晴らしいですね」



「ああ。俺たち、本当に良いチームだ」







 その日の夕方、俺は静香と最終確認をした。



「本当に大丈夫? システムの問題で迷惑をかけたんじゃ……」



「大丈夫です。むしろ、みんなで問題を解決できて良かったです」



 静香は微笑んだ。



「これが本当のチームワークですね」



「そうだな。君がいてくれて本当に良かった」







 月曜日の夜、俺は公開前の最後の夜を過ごしていた。



「明日、ついに公開か……」



 長い道のりだった。



 個人的な恋愛の悩みから始まって、研究室のチームプロジェクトになり、今では多くの人に使ってもらえるシステムになった。



「どんな反応があるかな」



 期待と不安が入り混じった気持ちだった。





 その夜、俺は新しいファイルを作成した。



【Love Type Analyzer - 公開版 ver.1.0】



開発メンバー:

田中優太、山田静香、石倉歩美、鈴木大輔、高橋健



開発期間: 3ヶ月



機能: 心理学に基づく恋愛タイプ診断とアドバイス



目標:多くの人の恋愛をサポートし、幸せなカップルを増やす



「みんなで作り上げたシステム。きっと多くの人に喜んでもらえる」



 俺は確信していた。



 明日から、新しい章が始まる。





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