気まぐれ王子と召使い
チャイムが鳴り、教室の中で喧騒が聞こえてくる。
今は、世那の近くに居たくない。
よろりと立ち上がり教室から出ようとすると、世那がグイッと私の腕を引いた。
「どこ行くんだよ」
「……ちょっと、気分が悪くて……」
「なに、まさかさっきの気にしてんの?」
眉をひそめて私を見つめる彼に、私は何も言わなかった。
「西宮もあんな気にしなくても良いのに」
「……世那には分からないよ、あんな風に言われた人の気持ちは……」
「やましい事があるからいけないんだろ?生徒と付き合ってないんなら適当に流しとけば良いんだから」
「例えそれが"噂程度"の物だったとしても、ああやって皆から詰められたら……」
先程の光景を思い出し、言葉が詰まる。
中学の時の嫌な記憶が蘇ってきて鳥肌が立つのが分かる。
人間の悪意がどれほど恐ろしいのか、世那には分からないんだ。
「気にしすぎだっつーの。本当、お前って変に感受性豊かだよな」
「…………」
「分かったって。もうしないから、お前も西宮の事は気にすんな」
優しい声のトーンで宥めるように言う世那に、なんだか心の中がぐちゃぐちゃになっていくようだ。
さっきまではこんな奴の傍に居たくないって考えてたのに、ちょっと気にかけて貰えただけでスっと心が軽くなったような気がしたんだ。
西宮先生を気にかけている感じを出しておきながら、自分さえ良ければそれで良いのかという浅ましい思いに吐き気がした。