気まぐれ王子と召使い
「あ……世那」
「あー?」
静かに、だけどやけに耳に残る声だった。
突然後ろから呼び止められ、世那が訝しげに振り返ると、今一番世那の心をかき乱しているであろう人物がいた。
「こ、琥珀君!」
控えめに伏せられた目がゆっくりとこちらを向く。
キラキラと宝石のように美しい瞳が私を映す。
だが、すぐに世那の方に向き直り小さく口を開いた。
「なんか……話すの久しぶりだね、世那、それに夕香里も…高校に入ってからはあんまり話して来なかったし…」
「あ、あぁ〜……そ、だね……?」
琥珀君って大人しそうだけど、こう見えて結構距離を詰めてくるの早いんだよね。
下の名前で呼ばれるのが慣れなくて狼狽えていると、世那は機嫌が悪そうに舌打ちをした。
「…おい、女男。俺に用があるんじゃねーの?さっさと本題に入れよ」
世那はだらしなくズボンのポケットに手を突っ込ませて、琥珀君に詰め寄る。
完全に圧をかけているようだけど、琥珀君は意にも介してないのかこてんと首を傾げるだけだった。
「あれ……俺は世那が俺に用があるって聞いたんだけど…」
「別に俺はお前に用なんざないけど。強いて言うなら、西宮センセーと付き合ってるって事実を茶化しに行こうとしたぐらい?」
あれだけ熱心に執着しておいてよくもそんな事が言えるよ…