気まぐれ王子と召使い
「せ、世那!」
世那の方に駆け寄ろうとしたけど、世那は私に視線だけを寄越して首を横に振った。
"お前は下がってろ"と暗に伝えているのだろう。
「このクソ野郎!!お前さえ居なければ、先輩がこんなに引きずる事なんて無かったのに!!」
倒れ込んだ世那に彼は再び拳を振り上げたので、思わず咄嗟に彼の腕を両手で思い切り引っ張った。
(いくら世那に下がってろって言われたってこんな事されてるのを見て黙ってられないよ…!)
世那は口の端を怪我しているのか血が一筋流れている。
「ぼ、暴力は良くないよ!!」
「うるせぇ!触んじゃねえ!」
そう彼が言った瞬間、勢いよく腕が振り払われる。
あ、と思うや否や、私も先程の世那と同じようにガラガラッと音を立てながら机を巻き込んで倒れてしまった。
全身を打った衝撃で頭がクラクラとする。
「あ……」
彼は倒れ込んだ私を見て、息を呑んだように顔を歪ませている。
まさしく"やってしまった"って顔。
罪悪感を感じる程度の良心はあるみたいだけど、彼の反応はどうでもいい。
(世那は……?大丈夫かな……)
目が回る視界の中、必死に視線を巡らせると、世那は目を見開いて私を凝視していた。
そしてすぐに彼の方へと視線を流すと、勢いよく立ち上がり、彼を思い切り殴り飛ばした。
ガシャンッ!と人が倒れ込む激しい音に、またクラスの誰かの悲鳴が聞こえた。
「ふざけんじゃねぇ!!誰のモンに手出してんだ!!」
そこからは、桜木先輩の新しい恋人と世那とでクラスごと巻き込んだ大喧嘩。
流石に私もあんな事をされて止める勇気が無く、机を背にしながら呆然とその喧嘩を眺める事しか出来なかった。