鏡の中の偽証者
辺りが静まり返った数秒、先生は閉ざされたドアに向かって呼びかけた。
「では入ってきてください」
「はっはい....!」
先生に応えるかのように、かすかに震えた女性の声が聞こえた。
それと同時にドアがゆっくり引かれ、白髪の転校生が姿を現す。
腰付近まで長い髪を揺らして歩く姿から、先程耳にした声の主のは別人のように見える。
転校生は前に立ち、淡々と自己紹介を始める。
「初めまして。百合《ひゃくあ》ユキと申します。今日《こんにち》からよろしくお願いします。」
頭を下げると、教室に拍手が広がった。
「....」
彼女をひと目見て、十七夜月《かのう》ヒロはふと感じた。
まるで一輪の百合であるかのような、凛々しくて美しい「女の子」だと....。
やがて拍手喝采と音が消えると、先生は僕の隣を指さした。
「じゃあユキさんの席は、一番後ろです。一応ヒロさんたち6班に加わり、班活動を行ってもらいます」
「!」
先生の声と同時に、ピタリと彼女と目が合う。
本来の僕なら、あまりの気まずさに視線を逸らすに違いない。
しかし、美しい彼女の姿を見て見ぬふりは出来なかった。
そのまま席に腰を掛けると、こちらへ微笑んだ。
「よろしくお願いします。ヒロ..十七夜月ヒロさん」
「....」
彼女の声は、透き通っていた。
ヒロ..さん....?
自分の名前が脳内でエコーするように響いている。
名前を呼ばれただけなのに、頭が真っ白になった。
「はいっ」
「ぇ....?」
今の僕の状態を察したのか、彼女は左手を差し出した。
「”よろしくね”の握手です」
「少し子供っぽいかもしれませんが、これならしていただけますか....?」
「....」
(握手!?)
唐突な申し出に固まり、差し出された手をじっと見つめていた。
彼女を物語るような、似合う髪色と薄白い手....。
反対に不格好な数々の絆創膏が、いくつか指に巻かれていた。
「こちらこそ..お願いします百合....ユキさん....」
その痛々しい手を僕を握らずにはいられなかった。
お互い手を離して、身体を正面に向ける。
すると前の席のシン君だけでなく、リツ君や殆どの生徒からの視線が痛かった。
(仕方のないことだから、気にするのはやめよう....)
思いのほか彼女の手は、しなやかさよりも確かな重みを感じさせる無骨なものだった。
優しい”鏡夜ユキ”にはとても似合わない、まるで男性のようだった。
「では入ってきてください」
「はっはい....!」
先生に応えるかのように、かすかに震えた女性の声が聞こえた。
それと同時にドアがゆっくり引かれ、白髪の転校生が姿を現す。
腰付近まで長い髪を揺らして歩く姿から、先程耳にした声の主のは別人のように見える。
転校生は前に立ち、淡々と自己紹介を始める。
「初めまして。百合《ひゃくあ》ユキと申します。今日《こんにち》からよろしくお願いします。」
頭を下げると、教室に拍手が広がった。
「....」
彼女をひと目見て、十七夜月《かのう》ヒロはふと感じた。
まるで一輪の百合であるかのような、凛々しくて美しい「女の子」だと....。
やがて拍手喝采と音が消えると、先生は僕の隣を指さした。
「じゃあユキさんの席は、一番後ろです。一応ヒロさんたち6班に加わり、班活動を行ってもらいます」
「!」
先生の声と同時に、ピタリと彼女と目が合う。
本来の僕なら、あまりの気まずさに視線を逸らすに違いない。
しかし、美しい彼女の姿を見て見ぬふりは出来なかった。
そのまま席に腰を掛けると、こちらへ微笑んだ。
「よろしくお願いします。ヒロ..十七夜月ヒロさん」
「....」
彼女の声は、透き通っていた。
ヒロ..さん....?
自分の名前が脳内でエコーするように響いている。
名前を呼ばれただけなのに、頭が真っ白になった。
「はいっ」
「ぇ....?」
今の僕の状態を察したのか、彼女は左手を差し出した。
「”よろしくね”の握手です」
「少し子供っぽいかもしれませんが、これならしていただけますか....?」
「....」
(握手!?)
唐突な申し出に固まり、差し出された手をじっと見つめていた。
彼女を物語るような、似合う髪色と薄白い手....。
反対に不格好な数々の絆創膏が、いくつか指に巻かれていた。
「こちらこそ..お願いします百合....ユキさん....」
その痛々しい手を僕を握らずにはいられなかった。
お互い手を離して、身体を正面に向ける。
すると前の席のシン君だけでなく、リツ君や殆どの生徒からの視線が痛かった。
(仕方のないことだから、気にするのはやめよう....)
思いのほか彼女の手は、しなやかさよりも確かな重みを感じさせる無骨なものだった。
優しい”鏡夜ユキ”にはとても似合わない、まるで男性のようだった。