愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
 辿り着いた先は厨房で、中では料理人の方々の他にパティシエの方が一人、黙々と作業をこなしていた。

「高間さん、少し良いですか?」
「如月さん、どうかしましたか?」
「こちら、本日より巴様専属メイドとなった来栖さんです。お菓子は彼女に運ばせてください」
「分かりました。初めまして、僕は上澤家専属のパティシエをしている高間 利久(としひさ)。よろしくね、来栖さん」
「来栖 侑那です! こちらこそ、よろしくお願い致します!」
「それでは来栖さん、早速高間さんからお菓子の説明を受けて、それを巴様の部屋まで運んでください。食べ終わるまで、ドアの側に立って待っているように。終わったら片付けをして部屋を出て、また私のところへ来てください。部屋を出る前に巴様から何かを言い付けられた場合は、その用事を済ませてから来るように」
「分かりました」

 私を厨房に残して如月さんは出て行ってしまったので、ひとまず高間さんからの説明を受けることにした。

「大変だね、巴様の専属なんて」
「やっぱり、そうなんでしょうか?」
「うーん、まあ、僕が来てからもう五人くらい変わってるからね……」
「そんなに!?」
「ここ最近は特に、長続きしないんだよ……巴様、言い方も結構きついところがあるから、耐えられないんだろうね」
「そうなんですね……」
「だから、最近は僕が直接お菓子を届けていたから、その役を引き受けてもらえるのは物凄く助かるよ。巴様は甘い物が大好きで、一日三回は必ず甘い物を届けなくちゃならなくてね、運ぶ役もやっていると、なかなか集中して作る作業に取り掛かれなくて」
「そうなんですか、それは大変でしたね。私はすぐに辞めるつもりは無いので、高間さんは今日からお菓子作りに専念してくださいね!」
「はは、有り難う。頼もしいよ。それじゃあ、早速説明するね」
「はい!」

 羽川さんから紹介された住み込みの使用人たちは皆私より年齢が上の方ばかりだと聞かされていたから不安もあったけれど、中でも高間さんは年齢が割と近いみたいで話しやすく、すぐに打ち解けられそうで安心した。
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