愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
「お待たせ致しました、巴様。ご用件は?」

 呼び出されてすぐに部屋を訪れたものの、

「遅い。もっと早く来れないのか?」

 顔を見せて早々に怒られるけれど、これはいつものことで想定内。

「申し訳ございません、お庭で洗濯物を干していたものですから」
「洗濯? そんなもの、他のメイドにやらせれば済むことだろう?」
「そういう訳にはいきませんよ。いくらベテランさんばかりと言っても、人手は多いほうが良いに決まっていますし、私もメイドの一人ですから」
「お前は俺の専属メイドなんだろ? それなら家のことをするよりも常に俺の側に居るのが当然だろ? いちいち呼び出すのも面倒だ、如月に言ってお前は他のことをやらなくていいようにしてやる」
「そんなっ! それは困ります」
「何故だ?」
「確かに私は巴様専属メイドとして雇われている身ではありますけど、このお屋敷で働いている以上、他の皆さんのお役にも立ちたいからです」
「…………そんなことを思うなんて、意味が分からないな。仕事をせずに金が貰えるならそれが一番いいだろう?」
「そうでしょうか? 寝起きを共にしている仲間のような存在なので、その方たちの役に立ちたいと思うのは自然なことかと。それに私は、ただお金が貰えればいいと思って仕事をしている訳でもありません。やるからには責任感を持って与えられたことをやっていますし、どんなことにでも一生懸命打ち込むと、いつかその経験がどこかで役に立つものです。だからーー……」
「…………もういい、好きにしろ」
「ありがとうございます。それで、巴様のご要件は?」
「喉が渇いたから飲み物を用意しろ」
「かしこまりました。コーヒーと紅茶、どちらがよろしいでしょうか?」
「お前に任せる」
「それでは、只今用意して参りますので、少々お待ちください」
「すぐに持って来い」

 用件を聞いた私は巴さんの部屋を出て厨房へと向かって行く。
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