愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
「ちなみに、このレシピは今うちで雇っているパティシエが適当に考えた、大して美味くもないケーキのレシピだ。お前らは高間に何を言われてもこれが美味い、これでいくと通せ。アイツだってパティシエだ。こんなものを新作として出すことを躊躇うだろうが、同じにしねぇと意味がねぇからな。これをそのまま販売するか改良するかは相手の店次第だが、そもそもこんなレシピを流せば高間自身の信頼も落ちるだろう。アイツを地に落とすには絶好の機会だ」
「…………」

 何故巴さんはそこまでしてくれるのだろうか。

 お屋敷を出る時、喧嘩別れのような形になっただけではなく、あんなに失礼な態度を取ったのに。

 そう戸惑いと疑問を持っていた私に巴さんは、

「――あの時は、悪かった。今だから言うが、高間を辞めさせたのはお前とのことだけでは無く、噂を知ったからという理由もあったんだが、たかが噂の段階で辞めさせるような横暴なことは出来なかったから……お前とのことを理由に辞めさせるような形になった。まあ、それに巻き込んだ罪滅ぼしも兼ねて、今回はうちが全面協力をしてやる」

 高間さんを解雇したこと、今回全面協力をしてくれる理由を述べてくれた。

「そう、だったんですね……」

 父と顔を見合わせ、どう返事をすべきかアイコンタクトを取る。

 けど、私も父も思いは同じ。

 このままやられっぱなしなんて納得出来ないし、高間さんの本音もきちんと聞きたい。

 それを感じ取った私は巴さんに、

「分かりました、巴様の仰る通り、このレシピを元に新たな新作ケーキを発表すると、高間さんに伝えます」

 作戦を実行する意志を伝えた。
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