愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
「え? もう一度新作ケーキを作るの?」

 巴さんが家にやって来た翌日、心配して来てくれた高間さんにもう一度新作ケーキを作ることを話すと、驚いた様子を見せながらも、どこか瞳の奥が怪しい光が灯るのを感じた。

 きっと心の中で、『コイツら馬鹿だな』とでも思っているのだろうと考えると少しだけ悲しくなる。

「このままじゃ終われないから……もう一度頑張りたくて……それと、実は、もう案は出来ていて、今回も高間さんに手伝ってもらいたいなって思って……」
「どれどれ」

 私から新作ケーキのレシピを受け取った高間さんは、それに目を通していく。

「勿論、今回も手伝わせてもらうよ。今度こそ、上手くいくよう前よりも慎重にやろう」
「ありがとう、心強いよ」

 そして、思惑通り高間さんが協力してくれることになり、翌日の夜から父と新作ケーキ作りを始めてくれた。

 厨房にはいくつかの隠しカメラが設置されている中、私も父も高間さんに気づかれないよう、いつも通りに過ごしていく。

 ケーキ作りを始めて数日後、一度仕上がったケーキを試食した高間さんが、

「このケーキ、見た目は良いと思うんですけど、味が少し……」

 味について難色を示した。

 勿論、これも作戦のうちなので、

「そうですか? 侑那、お前はどう思う?」
「うん、私は美味しいと思うよ」

 父と二人、このケーキは十分美味しいということをアピールしていく。

「……そっか……。うん、まあ甘さ控えめで良いかもね」

 勿論、お世辞にもあまり美味しくは無いし、こんな物を販売するなんて余計炎上しそうなくらい。

 それは高間さんの表情を見ても明らかなのだけど私はそれに気づかないフリをして、新作ケーキが完成するのを待っていた。
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