愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
 夜、お店から帰宅した私は巴さんに電話を掛けた。

『――何だ?』
「あの、夜分遅くにすみません……。その、今日はありがとうございました。如月さんと櫻井さんに手伝いに来てもらって、助かりました」
『ああ、問題無い。店の方、繁盛したみいで良かったな』
「……そのことで、一つお聞きしたいんですけど……巴様が、スイーツブロガーの【T.】さん……なのでしょうか?」
『何のことだ?』
「とぼけないでください! そのブロガーさんがうちのお店のケーキを褒めて下さったお陰で、ああして沢山のお客さんが来てくれたんです! 巴様、なんですよね?」

 巴さんはとぼけているけど、絶対にそうに決まってる。

 だって、そうじゃなきゃ、今日起こった全てのことに説明がつかないもの。

 ここ最近お店のケーキを買ってくれたのは上澤家の人間だけで、今日だって、助っ人を派遣してくれただけじゃなくて、必要な食材までも、事前に手配して届けてくれた。

 それに、お店がどうなるか分からなくて不安になっていた時、その問題も直に解決すると断言してくれていた巴さん。

 初めからこうなることが分かっていたから出てきた言葉に違いないのだ。

 人気のスイーツブロガーが宣伝したとなれば、それだけで注目されて、お店は繁盛するのだから。

「……ありがとう、ございました。本当に本当に、感謝しています」

 巴さんが認めてくれないなら、もうそれでもいい。

 彼の行動によってうちのお店が救われたことは事実なのだから。

 私の感謝の言葉に、巴さんは何も答えなかったけど、電話口でほんの微かに笑っている気配を感じることが出来た私は、それを肯定の言葉として受け取ることにして、再度感謝を伝えてから電話を切ったのだった。
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