愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心

財閥の御曹司様

 翌日、上澤家にやって来た私は昨日同様インターホンを鳴らして中へと入れてもらう。

 割り当てられた部屋に持って来た荷物を置いた私はその部屋の広さに思わず息を呑む。

(……メイドの私が住むには広過ぎるし、家具とか装飾も立派過ぎるような……)

 自分の部屋の倍以上の広さや立派な調度品の数々に戸惑いつつも、荷物を置いたらすぐに部屋を出るよう言われていたことを思い出して急いで部屋を出た。

「それでは、来栖様が担当する上澤家のご子息、(ともえ)様の元へご挨拶へ伺います」
「は、はい!」

 待っていた如月さんに連れられて今日から私が担当することになる上澤家子息、上澤(うえさわ) 巴さんの部屋へ向かった。

「巴様、今日から働くことになったメイドが挨拶に来られました」
「入れ」
「失礼致します」

 如月さんに続いて巴さんの部屋へ入った私は、言葉を失った。

 さっき荷物を置いた部屋も充分広かったけれど、その倍の広さがある部屋だったから。

 そして、大きなソファーに腰掛ける黒髪の短髪に切れ長の鋭い瞳を持つ、整った顔立ちの好青年が本を読む手を止めてこちらへ視線を向けてくる。

 まるで童話に出て来る王子様なような見た目だけど、冷ややかな視線と眉間の皺がそれを台無しにしているように思った。

「お前が新しいメイドか……」

 そして、低く落ち着いた声がこの場の空気を変えた。
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