運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 だから、単発や短期の案件ばかりを選び、匿名性の高いクラウドワークやライティングの仕事に手を伸ばした。

 企業向けの資料作成や文章のブラッシュアップ、簡単な翻訳やデータ入力。
 秘書時代に培ったスキルが思った以上に役に立ち、納品を重ねるうちに、少しずつ生活費をまかなえるようになっていった。
 報酬は大きくない。それでも、誰にも行き先を知られず、生活ができるそれで十分だった。
 穏やかな日常の中でお腹の命は少しずつ育ち、臨月を迎えるころには手足の浮腫みや疲れを感じながらも、最後まで在宅の仕事を続けていた。

 そして――出産の日。

 生まれたのは、女の子だった。

 病院の白い天井を見上げながら、その小さな産声を初めて耳にしたとき、思わず「ありがとう」と声がこぼれた。自分の身体から生まれたとは思えないほど小さな命は、けれど確かに強くて、私を守るように力いっぱい泣いてくれた。
< 128 / 328 >

この作品をシェア

pagetop