運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 きっぱりと言い切ると、優希くんはしばし沈黙した後、何度か小さくうなずいた。
「これ以上は、君の隠している部分に触れることになるんだろう。だから、今は聞かない。ただ――いつか話してもいい、相談したい、そう思ったときには、必ず俺に言ってほしい」

 真剣な瞳に射抜かれ、私は言葉を失った。
「私は……」

 このまますべてを話してしまおうか。声を震わせながら口を開いた瞬間、琴音と麻子さんの顔が脳裏に浮かぶ。虐げられた日々、浴びせられた数々の言葉が、胸を締めつけるようによみがえった。今ここで打ち明けてしまえば、少しは楽になるのかもしれない。けれど――。

 これほど優しい彼だからこそ、過去の一夜を「過ちの代償」だからと、無理をして私のすべてを助けようとするかもしれない。それは彼を私の事情に巻き込むことになる。ずっと心の支えで、大切で、大事な人だからこそ、これ以上負担を背負わせるわけにはいかない。
 キュッと唇を噛みしめ、私は静かに頭を下げた。
「失礼します」
 お盆を胸に抱いたまま、足早に彼の部屋を後にした。
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