運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 これほどまでに、仕事ができない人だったなんて――。
 
 父は、表面だけを取り繕い、部下の手柄をまるで自分の功績のように見せかけていただけなのだ。
 その事実に気づいた瞬間、想像をはるかに超えた現実に、思わず言葉を失った。
 そんな父に仕えることは本意ではなかったが、祖父母の遺した大切な会社を、絶対に守り手放したくない。その思いひとつで、私はこれまでのすべてを耐え抜いてきた。

「失礼します」
 副社長室を出て、すぐ前にある社長室のドアを開けると、父はゴルフクラブを磨きながら、あからさまに不機嫌そうな顔で私を睨みつけた。

「なんだ?」
「先日の店舗のことですが」
 そう口にした瞬間、父は「は?」と間の抜けた声を上げた。どうやら、自分で言ったことすら忘れているらしい。
「先日、社長が減給や休み返上を命じた件で、社員たちが離職の意向を示し始め、店舗全体の士気が大きく下がっています」
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