貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
タオルで拭きとり、ハンガーにつるすが、しばらくすると水がポタポタ垂れてくる。

もっと困ったことがある。
下着の替えはあるが、上着とスラックスはこれしかないのだ。

ガレージの2階にシャワーは、水しかでないし、せっけんもちびたものしかない。

ジェシカは冷たいのを我慢して、シャワーを浴びると、シーツを体に巻きつけた。

外はとっぷりと暗くなり、足元から冷気が立ち上ってくるのが感じられる。

本館のランドリールームに、アイロンがあるだろうか?

裏口から静かに入れば・・・
アイロンを借りるだけだから・・・
大丈夫だろう。

ジェシカは首から下げた鍵を握りしめ、本館を見た。

1階は暗く、2階だけが電気がついて明るい。

たぶんアレックス様は・・・
2階の寝室か書斎にいるはずだ。

「さぁ、夜のお仕事だよ。行きなさい」

バリーを放すと、その姿はすぐに暗闇にまぎれていった。

ジェシカは、決断をして速足で裏口に向かった。

冷気が地面から上がるこの季節に、シーツ1枚はつらい。
しかも、裸足だ。

シーツをすっぽりかぶり、懐中電灯で照らしながら、裏口の鍵を開けた。
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