貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
厨房のすぐ横にランドリールームと、掃除用具の入っている倉庫がある。

ランドリールームの棚をあけ、懐中電灯で上から下まで照らして見たが、
リネン類が整然とつまれているだけだ。

これは・・・アイロンは掃除用具のほうかな・・・

ジェシカが棚を閉めた時、いきなり明かりがついた。

「手を上げろ!!」

低い声が響いた。

ジェシカが首元でシーツをぎゅっとつかんで、恐怖のあまりフリーズしてしまった。

「両手を壁につけろ」

「すすす・・・みません・・・
ジェシカ・・・バリントンです・・・」

所長の言っていた言葉が、フラッシュバックする。

接近戦に強い。当然、一発で仕留めるだろう。
窓ガラスに、ドアの側で銃をかまえたアレックスの姿が映っている。

「まったく・・・何をやっているのですか?
ハロウィーンの仮装ですか?」

アレックスがあきれたように声をあげ、銃口を下げた。

「あああの、ああ、アイロンを・・・お借りしたくて・・・上着を乾かしたいので・・・」

緊張のあまり、口が渇いてうまくしゃべることができない。

「はっ?アイロン?」

アレックスが、不審げに首をかしげた。
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