好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 太鼓を叩くひとなんか当然いない。小学校かなんかの運動会をふと思い出した。

 あれも、観客は関係者のみの地味なものだった。

 審判が笛を吹き、試合の開始を告げた。なお、蒔田がFWを務める会社員チームはチームSE(エスイー)、桐沢がFWを務め、蒔田樹が監督を務める側はチーム蒔田と名付けられた。榎原たちから見て右から左に攻めるのがチームSE、左から右に攻めるのがチーム蒔田だ。

 のんびりとした気分を戒め、榎原は固唾を呑んで試合を見守る。勿論、彼女は蒔田一臣に勝って欲しい。

 得点数が多いほうが勝ちというルールだ。

 そのルールは、蒔田一臣と桐沢と彼女の三人だけしか知らない。表向きには、単なる練習試合としている。

「……案外、慎重な試合の入り方するんだね」竹田が頬杖をつきながら口を開いた。「これって監督の指示だろうね。……攻撃サッカーを標榜する横浜所属の蒔田樹らしからぬ采配だな」
「でも結構前線から守備してませんか? しかも結構連動してる」
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