好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!

act25. 居酒屋でラブラブトーク

 戻ってくると、どういうわけだか、父親が机に突っ伏して寝ていた。


「遅くなってすみません」少なからず彼女はその状況に面食らった。「うちの父、どうしたんですか」言いながら蒔田の横の席に座る。
「見ての通り」蒔田は、顎をしゃくって彼女の父親を示す。「お疲れのご様子だ」
「お父さん最近仕事忙しいって言ってたし……、疲れがたまってたのかもしれません」と、彼女は蒔田に向き直り、「蒔田さん。今日はせっかく時間作って貰ったのに、申し訳ないです」と頭を下げた。
「構わないさ。こうして誰かを待ちながら眠る人間を見守る時間も有意義な時間に違いない」
「嫌味のつもりですかそれ」彼女は、麦茶に口をつける。氷が溶けて既にぬるくなっている。「蒔田さん、なにか頼まれます?」
「僕は、……聞いていいのか分からないけども、聞いてしまったんだ」おもむろにメニュー表をめくっていた蒔田が、短い沈黙ののちに、彼女のことを見据えて言った。


「きみの、出生のことを」



 * * *


 片親に育てられ、不自由したことなどない。


 と言ったら厳密には嘘になる。例えば。

 一般的な女児が母親に頼るべき場面で、全然頼れなかった。
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