好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「制服のブレザーもスーツも大差ないではないか」と今度は蒔田が彼女のグラスにビールを注ぐ。すみません、と会釈してそれを飲んでから彼女が鼻息を荒くして答えた。「ぜんっぜん違います。色が黒と紺とで違うじゃないですか。紺ブレ着た蒔田さんがあたしは見たかったんです」

「今度着てこようか」

「ふげ! っ」両手を挙げて彼女が後ろに倒れこんだ。と思ったら、頭をぶんと振って背筋を伸ばして堪えた。

 蒔田は、なんだかすこし可笑しくなって、彼女に手を伸ばした。「どうした。すこし飲み過ぎたか」

「冗談にしても言い過ぎですよ」差し伸べられた手を掴み、上体を立て直しながら彼女は片手で鼻をこする。「制服着てくるなんてどんなジョークですか」
「制服とは言ってない。紺色のスーツくらいならうちにもある。一着だが」

「約束ですよ」

 彼女が、目をきらきらさせ、蒔田に笑いかける。


 蒔田は、一瞬、目眩がした。


 自分に恋する人間を目の当たりにした人間の反応とは常に、こんなだ。


 そして蒔田は気がつけば彼女のペースに飲まれている。酒を二杯。飲んだほうだ。
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