好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「おれも忘れよう、彼女のことは……」


 口に出してそう言ってみる。

 そうしないと、決意が崩れそうだった。仮に今後。


 彼女のことを思い出しても、それは恋じゃない。


 彼女が、忘れるように、おれも忘れよう。


『蒔田さん。ねえ、蒔田さんってば。


 眉間にしわ、寄ってますよ』


『そんな怖い顔無理して作らなくても、大丈夫ですって、あっはは』


 ……どういうわけだか、彼女にはポーカーフェイスが通用しないことが多かった。

 周りからは鉄仮面、鉄面皮、無表情と評されるのに。

『なにを考えているか分からない』と言われることもあった。だが。彼女が絶対にそんな台詞を言うはずがない、そんな確信が彼にはあった。


『好きです――蒔田さんのこと。

 部下じゃなくって、ひとりの女性としてあたしのこと見てください』――もし。

 彼女とあんなかたちで出会わなかったら。

 どんな未来が二人には待っていただろう。考えても無駄だ。もう彼女は自分を拒んだのだから。


 とこんなふうに。

 考えないようにすればするほど彼女のことを考えてしまう。それは。

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