好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
「いや。よく来たんだな、ここに……」

「うん。残念だったね、隣の公園、冬以外はみどころ満載だよ。広くて緑が多くてとてもきれいなの」

「おまえも充分きれいだ」

「ば」彼女は恥ずかしげに俯く。「次。蒔田さんの番」

「……お父さんを待たなくていいのか」

「お父さんは来たら勝手にやるから」

「まあ……分かった」しぶしぶといった感じで、蒔田はしゃがみ、祈る。

 果たしてなにを祈っているのだろうと彼女は思う。

 眼鏡につきそうなほど長いまつげ。理知的な横顔。ここが墓場じゃなければ、後ろから抱きしめていた。

 浮かぶ妄想に、彼女は赤面する。

「終わった。行くか」

「あ。お父さん……」こちらに歩いてくる父の姿を認めた。おーい! と両手を挙げて大きく振る。

 近づくまで何度も繰り返し呼ぶ有り様。

「それ、……癖なのか」片膝に手を添え、蒔田が立つ。

「癖って? なにが?」

「……大声で手を振るやつ」

「……あ。なんでだろね。気づかなかった……」

「生まれてから一度も誰にも指摘されなかったということか」

「そう、なります……」

「幸せなことだ」

「え? なんで?」
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