好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
蒔田がお酒に弱いことは、蒔田と彼女だけの秘密だ。いつもウーロンハイを作る役割の彼女に、蒔田がそっと打ち明けてくれたのだ。蒔田のためにとびきり薄いウーロンハイを作るのが、彼女の密かな楽しみだった。
帰る方向も二人だけが一緒だ。
* * *
「蒔田さんてあんま飲まないんですね」
「『飲めない』んだ。……ほかの奴らに吹聴するなよ」
「言ってませんて。お兄さん、このお近くにお住まいなんですか」
「近いってほどではないが、まあ行ける範囲内だな」
言って蒔田は電車のドアに寄りかかる。
彼女は黙ってその様子を見つめた。吐く息が白い。電車のなかは暖房が効いているのに、隙間風が寒さをもたらしている。座席のシルバーの手すりをそっと持つと、思いのほかひんやりしていた。
次の春を迎えれば、蒔田と出会って二年が経つことになる。
彼と出会った頃はリクルートスーツを着た新入社員だった。配属された先でも着たほうが無難だという大多数の意見に流されリクルートスーツを着ていた。
配属先には、いつも真っ黒なスーツを着ている上司が居た。黒い髪、白いワイシャツでなんだかカラスみたいなひとだと思った。
帰る方向も二人だけが一緒だ。
* * *
「蒔田さんてあんま飲まないんですね」
「『飲めない』んだ。……ほかの奴らに吹聴するなよ」
「言ってませんて。お兄さん、このお近くにお住まいなんですか」
「近いってほどではないが、まあ行ける範囲内だな」
言って蒔田は電車のドアに寄りかかる。
彼女は黙ってその様子を見つめた。吐く息が白い。電車のなかは暖房が効いているのに、隙間風が寒さをもたらしている。座席のシルバーの手すりをそっと持つと、思いのほかひんやりしていた。
次の春を迎えれば、蒔田と出会って二年が経つことになる。
彼と出会った頃はリクルートスーツを着た新入社員だった。配属された先でも着たほうが無難だという大多数の意見に流されリクルートスーツを着ていた。
配属先には、いつも真っ黒なスーツを着ている上司が居た。黒い髪、白いワイシャツでなんだかカラスみたいなひとだと思った。