好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 初対面で『おまえ』呼ばわりされた。上から目線な物言い、不遜な態度。確かに上司は上司だけどたった三年違いなのだから、まるで先生と弟子みたいな、まるきり立場が別みたいな態度はどうかと思うのだけれど

 それでも惹かれる自分が居る。

 惹かれてしまう自分が居る。

 彼女は、蒔田が沈黙するときには黙った。会話が佳境に入ろうとするときに、決まって蒔田は席を外す。だがいまは電車内だ。人目もあるから、話しかければきっとなにか返してくれるはず。

 そんな期待を込めて、彼女は口を開いた。「蒔田さん。あの。こないだ、あたし、見たんです」
「なにをだ」蒔田は目を瞑ったまま答える。眠いというわけでは無さそうだが。
「蒔田さんが、お兄さんの奥さんと一緒に居て、……あの赤ちゃんを抱っこしているのを」
「そうか」蒔田は軽く自分の眉間に触れ、そしてその手を離す。
「それで、あたし、……変ですよね。蒔田さんの隠し子かも、って早とちりしちゃったんですよ」変ですよね、ははは、と乾いた笑い声を彼女は立てた。笑ってみて彼女は、自分の笑い声が作りものめいている、と思った。
「変ではない。似ているのだから」
「気づいていたんですか」
< 78 / 270 >

この作品をシェア

pagetop