好きバレ! 俺様上司の溺愛が止まりません!
 かくして彼はかつて、一瞬でも榎原紘花が『ひとりで生きていこう』と決めたように、独身を貫こうといま時点で決めた。というのは、


 近づいてくる女性に魅力を感じないのだ。


 彼の親友・桜井和貴もある種の女性不信に近いが、彼の程度は親友のそれよりも深い。

 出会いのチャンスなど、求めなくても腐るほどある。友人同士の飲み会。合コン(彼は好き好んで出席はしなかったが)。新入社員に協力企業の女性。結婚式の二次会。みんな、話しかけてくるときはどこか浮き足立っていて、上っ面だけを見ている軽薄さが漂うのだ。アルコールの匂いも加われば嫌悪感はなおさら増す。

 濃い化粧の香りなど、言うまでもない。

 自分に気がある女性を見抜けぬほど彼が鈍感でなかったのがひとつの不幸の要因だ。むしろこころの声など聞こえすぎるくらいだ。ちょっと見れば、分かる。

 相手の好意の度合いが強ければ強いほど、彼はベクトルが逆方向に進むのを感じた。引く。

 その点、榎原紘花に関しては、最初から向こうが勝手に嫌悪感を表してくれたから、関わるのが楽だった。嫌われるくらいのほうが、やりやすい。
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