治療不可能な恋をした

まるで息をするみたいに自然な動作で、理人は梨乃の頬にそっと唇を落とした。

ほんの一瞬の、やさしく触れるだけのキス。けれど奥に込められていた気持ちは、肌から胸の奥までまっすぐに染み込んでくるようだった。

「……ずるい」

小さくこぼれた梨乃の声は、笑っているようで震えていた。

それでももう、理人の腕の中から逃げようとはしない。むしろその胸元に額を寄せるようにして、そっと身を預けていく。

「私、恋人とか初めてだから……こんなふうにされるの、慣れてないのに」

「じゃあ毎日する。毎日甘やかすから、早く慣れて」

理人の声は低く甘くて、まるでとろけるみたいだった。その言葉のひとつひとつが梨乃の胸に降り積もって、不安という名の影を静かに溶かしていく。

「俺なしじゃ生きてけないってくらい、もっとぐずぐずに溺れて」

その言い方があまりにまっすぐすぎて、梨乃の喉が小さく鳴った。鼓動が速くなり、熱がのぼる。

そっと頷いた瞬間、理人の腕が強く梨乃を抱きしめた。どこにも逃げ場なんてないほどに、包み込むようなぬくもりだった。

「梨乃が好きだ。ずっと好きだった。お前以上に欲しいものなんかない……だから、これからはずっと隣にいて」

そんな言葉まで落としてくるなんて、ずるいにもほどがある。

「……うん」

目元が滲み、それ以上はもう何も言えなくなって、ただ彼のあたたかな腕の中で、梨乃は小さく笑った。
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