治療不可能な恋をした
「……梨乃……」
声にならない呼びかけが漏れた。名前を呼ばれるだけで、愛おしさがあふれる。
怒っても、拗ねても、いつもドキドキさせられる唯一無二の人に、梨乃はどうしようもなく心を奪われる。
「……理人」
そっと呟くと、理人はふと愛撫を止めて顔を上げ、じっと梨乃を見つめる。
「……私は…どんなふうでも……理人が、いいの」
唇を噛みしめ、頬を赤く染めながら、震える声に気持ちを込める。
「怒っても、拗ねても……かっこいいだけじゃなくても……ぜんぶ、好きだから」
心からの素直な言葉に理人は一瞬、息を止めた。
そしてすぐ、息をもらすように「ははっ」と笑う。幸せそうに目を細めるその笑顔に、胸がまたきゅう、と締め付けられた。
「やっぱり……お前、俺を振り回す天才だわ」
そうして少し急かし気味だった手の動きは、ゆるやかに、愛おしむように変わった。指先が敏感なところを撫でるたびに体が熱を帯び、息が浅くなる。
理人の体がそっと重なり、わずかな距離すらなくなる。息遣いが混じり合い、心臓の音が耳元で響く。
柔らかな橙色の光が壁やシーツに揺れ、微かな音だけが静けさを震わせる。窓の外の夜も、街の喧騒も、どこか遠くのことのように感じた。
目を閉じ、肌を合わせるたびに膨れ上がる愛しさ。永遠に続くかのようなこの幸せに、梨乃はただひたすらに溶かされていった。