治療不可能な恋をした

愛梨がくすくすと笑いながら、からかうように目を細める。

「お母さんから聞いてるよ。最近、外泊多いみたいじゃない?」

「えっ…え!?」

梨乃は咄嗟に顔を手で覆い、慌てて弁解する。

「そ、そんなこと……いや……だから、その……」

声は小さく、途切れ途切れ。どれだけ考えても言い訳は見つからず、頬は赤く染まるばかりで、無意識に両手をぎゅっと握りしめる。

愛梨はその様子を楽しむかのように、さらに軽くからかう。

「そんな必死にならなくても。付き合いたてなんだから、普通に浮かれてたらいいじゃない」

「浮かれるって……」

「大学の同期だっけ?お互い大学病院の医者なら相当忙しいだろうし、デートの時間あんまりとれないんじゃない?」

「それは、まあ……」

「同棲とかしないの?そっちの方が長く一緒にいられるのに」

その一言に、梨乃の心が一瞬止まった。

「……同棲……」

その言葉が頭の中で繰り返される。

冗談で理人に「ここに住んでよ」と言われたことはあったけれど、真剣に考えたことはなかった。

けれど愛梨の言葉を聞いた瞬間、ふっと現実味が帯びて、胸の奥がざわつく。

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