治療不可能な恋をした

「梨乃、何考えてる?」

運転席から落ち着いた声がかかる。梨乃がちらりと横を見ると、ハンドルを握る手の力が少し緩んで、穏やかな表情が横顔に浮かんでいるのが見えた。

「……緊張で落ち着かなくて」

梨乃はぎこちなく笑みを作りながら、小さく続けた。

「私、本当に伺っても大丈夫なのかな……」

その言葉に、理人は横顔をほんの少し梨乃の方に向け、柔らかく微笑んだ。

「大丈夫だって。俺の家族はみんな気さくだし、変に構えなくていい」

理人はハンドルを握りながら、少し冗談めかして続けた。

「ただ……家はちょっとだけびっくりするかも。でもほんといたって普通の家族だから、気構える必要なんてないよ」

「どういうこと?」

「あー……まあ、家がちょっとデカいんだよ。雰囲気とかじゃなくて、建物のスケール的に。だから見たら驚くかもしれないって意味」

梨乃は目を見開き、戸惑いながらも言葉を選んで問いかけた。

「理人って……何者なの?」

そう言うと、理人は笑い声をあげて肩をすくめた。

「何者って。別に普通だよ。家系としてちょっと古いくらいで。地主ってほどじゃないけど、先祖代々続く家、って感じ」

「……」
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