治療不可能な恋をした
思わず言葉を失った。
先祖代々続く家。耳にするだけで、ますます敷居の高さを想像してしまう。
「……なんか、胃が痛くなってきた」
理人は一瞬きょとんとしたあと、すぐに苦笑して片手を軽く上げた。
「ごめんごめん、脅かすつもりじゃなかったんだよ」
運転しながらも、ちらりと梨乃の方へ視線を流す。
「じゃあさ、気分転換に途中でサービスエリア寄って、アイスでも食う?ちょっとは緊張紛れるかも」
「食べれる気しない……ていうか、冷たいもの食べたら余計に痛くなっちゃいそうだよ」
思わず返すと、理人は「確かに」声を立てて笑った。
そんな軽口を交わすうちに、ほんの少しだけ胸の重苦しさが和らいでいくのを、梨乃は感じていた。
そのまま車は市街地を抜け、郊外へと入っていく。
しばらく走らせると、コンビニや飲食店の並ぶ通りが途切れ、のどかな風景へと切り替わっていった。道路脇には低い石垣や畑が続き、遠くには緑濃い山並みが見える。
窓の外には次第に田畑の広がる景色が見え始め、空がぐんと広がっていく。
「このあたりまで来れば、もうすぐかな」
理人の言葉に、梨乃は胸の鼓動がまた少し速くなるのを自覚する。
やがて、遠くに見えてきた立派な門構えの家屋に、梨乃は無意識に息を呑んだ。