治療不可能な恋をした

そのとき。

ベッドサイドに置かれたスマートフォンから、けたたましく目覚ましのアラームが鳴り響く。

「……るっせぇ……」

乱暴に画面へ手を伸ばし、タップして音を止める。そのままベッドに沈み込むように体を戻した理人は、眉間に皺を寄せて目を開いた。

まだ夢の続きを引きずるような、不機嫌そのものの顔だった。

「あ、えと……おはよう」

声をかけてみても、返事はない。ただ数秒、眠たげな視線がじっと梨乃に向けられる。

すでに腕は梨乃を抱き込むように回されていて、動こうとしてもびくともしない。次の瞬間、その腕にぐっと力がこもり、さらに強く引き寄せられた。

「……まだ寝る………」

低くかすれた声が耳元に落ち、梨乃の胸は一気にきゅんと締めつけられる。どくどくと音を立てる鼓動を必死に誤魔化しながら、身じろぎする。

「で、でも……もう起きないと……」

「嫌だ。……今幸せに浸ってんだから、邪魔すんな」

不機嫌さを滲ませながらも、理人はそのまま顔を梨乃の胸元に埋めるように寄せてくる。寝ぼけた甘え全開の行動に、梨乃は観念するように小さく息をついた。

(……こういうとこ、ほんと、ずるいんだよなあ……)

普段は甘やかな笑みしか見せない彼が、寝起きだけは無骨でワイルドな一面を見せる。そのギャップに、まんまと心を撃ち抜かれてしまっていた。
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