治療不可能な恋をした
次第に人混みが途切れると、木々の間から渓流のせせらぎが耳に届き、落ち葉が水面をさらさらと流れていた。
やがて遊歩道の先に、地元の工芸品やもみじ饅頭を扱う小さな土産物屋が見えてきた。
「あ、お土産屋さん」
梨乃は思わず足を止め、少しだけうずうずしながら理人を見上げる。
「入ってみる?」
「いいの?」
「ダメな理由なんかねえだろ」
理人の笑顔に背中を押されるように、梨乃は頷き、二人は土産物屋の中に入った。
木の香りがほのかに漂う店内には、紅葉を模ったお菓子や地元の陶器、手作りの小物が丁寧に並べられている。棚をゆっくり見渡しながら、梨乃はひとつひとつ手に取っては、理人に見せて微笑む。
「これ、可愛いね。小皿に使えそうじゃない?」
「ん、いいな。どうせならお揃いで他にもいくつか買っとくか」
「え、お揃い?」
梨乃が思わず聞き返すと、理人は当たり前のように頷いた。
「せっかくの旅行だし。毎日一緒に使えば、思い出すだろ?」
「……そんなこと言って、理人が同じもの欲しいだけじゃないの?」
「ばれたか」
軽口で返しながらも、理人の目はどこか真剣で、梨乃の胸がじんわり温かくなる。