治療不可能な恋をした
「今でも梨乃とお揃いのマグカップ使うたび、なんか嬉しくなんだよ。梨乃がいつでも近くにいる気がして」
小さな声で言われ、梨乃の指先がぴくりと揺れる。思わず目を逸らしたが、頬は熱を帯びたままだ。
「……それは、わかる……けど」
理人はそれだけでは言い足りないとばかりに続けた。
「当直とかで会えないときも、梨乃と一緒にいるみたいに錯覚できるかなって」
「ふふ……それはちょっと無理があるんじゃない?」
思わず笑って返すと、理人も肩をすくめて照れ隠しのように笑う。その何気ないやりとりが、梨乃にはたまらなく愛しく思えた。
やがて、二人はもみじ型のもなかや小さな陶器の茶碗と箸置きの色違いをセットで手に取り、レジへ向かう。理人がさりげなく支払いを済ませると、梨乃は感謝の笑顔を向けた。
「ありがとう、理人」
「いいって。こういうのは、二人で楽しむものが一番だからな」
小さな店を出ると、再び遊歩道に広がる紅葉が目に入り、ふたりは次の散策へと足を進めた。