治療不可能な恋をした
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が大きく波打ち、呼吸がうまくできなくなる。込み上げる想いに押され、梨乃は目を閉じ、震えるまつ毛を濡らす涙を受け止める。
深く息を吸い込み、胸の内に渦巻く感情を必死に落ち着かせようとした。喜び、安堵、愛おしさ──そのすべてが一度に溢れ、胸の奥で絡まり合う。
唇がわずかに震え、言葉にならない声が喉に引っかかる。けれど、理人の真剣な瞳を見返した瞬間、心の迷いはすっと溶けていった。
そして、ようやく小さく、しかし確かな頷きを返す。
「……はい…っ!」
喜びと安堵、愛おしさで満たされた胸の奥に、柔らかな温かさが広がり、二人の間に静かな幸福が流れた。
理人はその答えを確かめるように、そっと梨乃を抱き寄せる。腕の中に包み込まれた瞬間、梨乃の胸の奥に積もっていた不安は溶けていき、代わりに深い安心感が広がった。
しばらくそのまま抱きしめ合い、やがて理人は耳元で小さく囁く。
「……指にはめていい?」
頬を赤らめながらも、梨乃は小さく頷く。差し出した左手の薬指に、理人は慎重に指輪を通した。
薬指に収まった指輪のきらめきが、柔らかく二人の手をつなぎ留めている。
そのとき、川沿いの風に乗って赤や金色の葉が舞い散り、まるで二人の歩みを祝福するかのように周囲を彩った。
秋の煌めきの中で、梨乃と理人は寄り添い合い、ひとつの揺るぎない大きな約束を胸に刻んだ。