傲慢王子の放浪譚〜調子に乗りまくって王位継承権を失いかけている崖っぷち王子の成長物語〜
黄金色の麦畑が風に揺れて波打っていた。
かつて幾度となく戦火に焼かれたこの土地も、
今は穏やかな陽射しに包まれている。
だが、
散見される砕けた石垣の跡が語っていた。
「平和」は、
誰かの犠牲の上に築かれているのだと。
「オルテンシア男爵フィリップ」と名乗り、
ダンデリオンの国境の村に身を置いた。
ダンデリオン大公国にやってきたのは
本当に偶然だった。
ユーフォルビア共和国をあとにし、
次はどこへ向かおうかと考えていた矢先に
同じ宿に宿泊していたキャラバンと親しくなったのだ。
以前の彼なら貴族以外の者と
親しくなるなどあり得なかった。
だが、旅を重ねるうちに
この世界には魅力的な人で溢れていることを
身を持って知ったのだ。
彼らはマグノリア王国を縦断し、
ダンデリオン大公国へと向かうという。
名前しか聞いたことがない小さな国。
これも何かの縁と思ったフィリップは、
このキャラバンに同行して
ダンデリオン大公国へと赴いた。
この国で目にするのは
のどかな風景に不釣り合いな人々。
疲れ果てた兵士たち、
親を失った子どもたち、
祈りを捧げる修道女たち――。
マグノリア王国の庇護があるとはいえ、
国境付近では小競り合いが散発すると聞く。
終わらない諍いに
皆疲れ切っているようだ。
その中でひときわ強く、
静かな光を放っている修道女に出会う。
彼女の名前はミリア。
若く、穏やかで、
しかし瞳の奥には
人々を救いたいという燃えるような決意があった。
「人は皆、何かを失っても生きていける。でも、希望を失えば、生きる意味を見失うのです。」
フィリップは、
彼女が子どもたちに語るその言葉に惹かれた。
彼女が高貴な家の生まれであることを知るのは、
ずっと後のことである。
かつて幾度となく戦火に焼かれたこの土地も、
今は穏やかな陽射しに包まれている。
だが、
散見される砕けた石垣の跡が語っていた。
「平和」は、
誰かの犠牲の上に築かれているのだと。
「オルテンシア男爵フィリップ」と名乗り、
ダンデリオンの国境の村に身を置いた。
ダンデリオン大公国にやってきたのは
本当に偶然だった。
ユーフォルビア共和国をあとにし、
次はどこへ向かおうかと考えていた矢先に
同じ宿に宿泊していたキャラバンと親しくなったのだ。
以前の彼なら貴族以外の者と
親しくなるなどあり得なかった。
だが、旅を重ねるうちに
この世界には魅力的な人で溢れていることを
身を持って知ったのだ。
彼らはマグノリア王国を縦断し、
ダンデリオン大公国へと向かうという。
名前しか聞いたことがない小さな国。
これも何かの縁と思ったフィリップは、
このキャラバンに同行して
ダンデリオン大公国へと赴いた。
この国で目にするのは
のどかな風景に不釣り合いな人々。
疲れ果てた兵士たち、
親を失った子どもたち、
祈りを捧げる修道女たち――。
マグノリア王国の庇護があるとはいえ、
国境付近では小競り合いが散発すると聞く。
終わらない諍いに
皆疲れ切っているようだ。
その中でひときわ強く、
静かな光を放っている修道女に出会う。
彼女の名前はミリア。
若く、穏やかで、
しかし瞳の奥には
人々を救いたいという燃えるような決意があった。
「人は皆、何かを失っても生きていける。でも、希望を失えば、生きる意味を見失うのです。」
フィリップは、
彼女が子どもたちに語るその言葉に惹かれた。
彼女が高貴な家の生まれであることを知るのは、
ずっと後のことである。