断罪の鐘で永遠を誓う ~かつて攫われた王妃候補は、最愛の誘拐犯に会いに行く~

幸福な誘拐

 私は11歳の時に誘拐された。
 その日は忘れもしない、初雪の日だった。
 王妃候補として最有力視されていた私は、雪が降るのを見ながら迎えの馬車を待っていた。どこか遠くからは、子どもたちの雪にはしゃぐ声が聞こえる。

「いいなぁ…」

 冷たくなった窓ガラスを、手袋越しに触る。生まれてから王妃候補として育てられてきている私は、雪で遊んだことなど一度もなかった。

 ほんの少しだけ羨ましいと思った。

 でもそれを言葉に出来ず、何気なく目を伏せたその時だった。

「どうしたんだ、お嬢ちゃん」

 すぐ後ろから声が聞こえる。
 慌てて顔を上げると、窓ガラスに反射して1人の男性が私の後ろに立っているのが見えた。悲鳴を上げるよりも、早く彼の人差し指が私の唇の前に立てられる。

「しー…」
「!!!」

 慌てて口元に手を当てると、彼は満足そうに頷いた。彼は反射したガラス越しに目を合わせたまま、口を開いた。

「雪遊びがしたいのか?」

 彼の言葉に首を横に振る。
 本当は遊びたかったけれど、それはいけないことだと教えられているから。

「そうか」

 彼はそれだけ言うと、私の後ろから手を伸ばして窓を開けた。
 頬を突き刺す様な寒さと冷たすぎる空気が、室内に入り込む。それでも、その寒さが心地よかった。

「気持ちいいだろ」
「…うん」
「……お嬢ちゃんさ、やりたいこと我慢して苦しくないか?」
「!」

 彼の言葉に、私は思わず目を見開いた。そんな私を見て、彼は悪戯に笑った。
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