ロマンス・エクスプレス
「いやー⋯⋯あなた、昭和の良心みたいな人ですね!」
「笑い事じゃないんですけど」
 入場券で特急に乗ってしまったなんて、この世知辛い世の中では、真っ先にキセル疑惑をかけられるかもしれない。
 人情もクソもあったものではない昨今、駅員に汽車賃を貸してもらえるとも思えないし⋯⋯。
 次の停車駅で放り出され、そのあとは、まさかパトカーで連行とか?
 何故、人助けをして、そんな目に遭わないといけないのか。

 そんな最悪のシナリオを考えていたところ、駅員が検札にまわってきた。
 万事休す⋯⋯そう思っていたら、
「あ、すみません。彼女のチケット代、ここで精算できますか?うっかり降り損ねてしまって」
「はい、可能ですよ。次の停車駅まででいいですか?」
「ええ」
 彼は、スマートに駅員とやり取りし、内ポケットから革の財布を取り出した。
 あれ?どうして彼がこの財布を⋯⋯?
「ハイ、これ」
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