借金令嬢は異世界でカフェを開きます
  ***

「やっぱりもう来ないかな」

 閉店時間まであと十分。
 さすがにオズワルドはもう来ないだろうと思ってため息をつく。少し早いが閉店の札を出そうと外に出たグレースは、近づいてくる足音にドキリとした。

「やあ、レディ・グレース。コーヒーを一杯もらえるかい」
「オズワルドさん」

 いつものように風にあおられたようなくしゃくしゃの髪と、疲れたように丸められた背中を見て、グレースは閉店の札を見えないようにしながら最後の客を迎え入れた。

(はあ、癒しが来てくれたぁ)

 さっきまでのしょんぼりした気持ちとは打って変わり、ウキウキした気持ちを隠しつつ、いつもの席に着いたオズワルドにいつものコーヒーを運ぶ。

「オズワルドさん、今日はなにか召し上がりますか?」
 注文を取るためにメモを取り出すと、オズワルドは眼鏡の奥の目を優しく細めた。
「ホットサンドがいいですね。コーンスープがあれば最高なんだけど」
「承知しました。サラダはどうされます? まだポテトサラダが残ってますよ」

 いつもは売り切れてしまう彼の好物を口にすると、オズワルドが子供のようにニッコリする。

「残ってるの? やった、それも頼みます」
「はい。では少々お待ちください」

 誰もいないキッチンに入り、ホットサンドの準備を始める。
 スープを温めて器に入れてサラダを置いていたトレーに載せれば、あと少しでホットサンドも出来上がりだ。
 美味しそうに焼けたホットサンドを切って盛り付け、スプーンとフォークを添えてそそくさとオズワルドの元に運ぶ。

「お待たせしました」

 声が弾まないよう平常の声で言って彼の目の前にトレーを置くと、オズワルドの顔がパッと輝いたので噴き出しそうになった。

(か、かわいい。オズワルドさんって、本当にコーンスープとポテサラが好きなのよね)
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