借金令嬢は異世界でカフェを開きます
「これ、生クリームですか?」
「あたり!」
「でもこんなにたくさん」

 グレースが目を丸くしたまま、じっと容器の中を見つめた。
 牛乳から生クリームを作るのは大変だ。絞った乳を置いておけば、自然に脂肪と分離して生クリームが取れる。でも百ミリリットルの生クリームを作るのに、必要な牛乳はその十倍だと聞いた。

(パッと見、二リットルはあるんだけど、これ)

 ピアツェのところからは、たまに少量の生クリームを買うことがある。けれども基本高級品。冷静に考えて、こんなに買ったら大赤字である。

(でもたっぷりの生クリームがあったら、メニューの幅がすごく広がるわよね。ウィンナ・コーヒーはピアツェさん絶対好きだろうし、ショートケーキだってできちゃう)

「ふふ。レディ・グレース、目がキラキラしてる。でもね、これ、本当は生クリームじゃないのよ」
「えっ?」
「マロン、先にばらしちゃダメじゃないか。まったく。グレース、いいから一口味見して、感想を聞かせておくれ」

 いつのまに出したのか、料理用の大きなスプーンを持ってきたピアツェに促され、グレースは素直に生クリームらしき何かをすくってみた。

(匂いも生クリームっぽいんだけど、ちがうの?)

 舐めてみるとやはり生クリームのように思える。

「いつもの生クリームよりさっぱりした感じね。でもコクがあっていい味だわ。これ、本当に生クリームじゃないの?」

 グレースがかつがれてるのかと心細そうな表情を浮かべると、二人は手のひらを打ち合わせ「やった」と、快哉の声をあげた。

「それはね、生クリームの代替品。息子のところで作ってる植物からできたクリームだよ」
植物性生(ホイップ)クリーム⁉」
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