借金令嬢は異世界でカフェを開きます
「ん、まだ名前はまだないけど、可愛い呼び方だね、それ。どうだい、グレース。生クリームの代わりに使えないかい?」
「ちょっと泡立ててみてもいい?」
「ああ。これは全部やるから好きに使っておくれ」

 ピアツェの許可をとりグレースがキッチンに道具をとりに行くと、マロンが「待って、これも見て」と呼び止めた。

「二つ目はこれよ」
 マロンの手元に見覚えのない道具がある。
「この上にある紐を引くとね、ここに付けている泡だて器がくるくるっと回るのよ。これも使ってみて」

 それは手動ではあるけれど、グレースがあったらいいなと思っていたハンドミキサーだった。
 使い勝手は少し違うが、普段泡だて器を使うのに比べて楽々とホイップできる。砂糖を入れ、あっというまに角が立ったクリームを味見すると、それは普段の生クリームと全くそん色がなかった。

「二人とも食べてみて。すごい。生クリームより少しさっぱりしてるけど、色はこっちのほうが白いし使い勝手がよさそうだわ」

 ホクホクとしながら、グレースはホイップしたクリームを小さな器に乗せて二人の前に置く。
 そんなグレースを見て、ピアツェは「気に入ったかい?」とニヤリと笑った。

「ええ、とっても。クリームも泡だて器も最高よ。これは商品化するのよね? 売れると思うわ」

 確信をもって断言したが、予想と反してピアツェとマロンは微妙な表情で顔を見合わせた。

「それが、そうでもないんだよ」

 グレースは喜んでくれたけどとこぼす二人は、代わる代わる事情を説明してくれた。
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