借金令嬢は異世界でカフェを開きます
人が初めて見るものを警戒するのは当然だ。知らないものは怖い――そう感じてしまうものだから。
(私が今カフェで出しているものだってそうだわ。ここで馴染みのあるものからはじめて、少しずつ馴染んでいってもらったんだもの。新しいものが好きな王都の人でも、まったく知らないものははじめ、注文してくれなかったものね。ポテトサラダも、ピラフも。信頼を築けた今だから、新しいものでも楽しんでもらえているけれど)
グレースは長いようであっという間だった三年を振り返り、あらためて目の前のクリームに意識を戻した。
「レディ・グレース。このクリームと普通の生クリームで、扱いの違いはあるのですか?」
「扱いですか?」
思ってもみなかったオズワルドの質問に目を瞬かせると、彼は軽く頷いた。
「そう。代替品とはいえ違いはあるでしょう。それとも全く同じに使えるのでしょうか」
「違い……」
グレースは今日試したことと前世の記憶をさらった。代替クリームは、ほぼ前世でいう植物性生クリームと同じだと考えていい。
「そうですね。ミルクを嫌いな人にしか差は分からないように思いますけど、あの独特のにおいが苦手な人にはこちらの代替品のほうが喜ばれると思います」
「なるほど。僕の知り合いでもミルクが苦手な人がいますよ。そういう方がクリームを楽しめるなら喜ばれるかもしれませんね」
オズワルドが優しく目を細めるのを見て、グレースはどぎまぎしながら視線を下げた。薄く色のついた眼鏡越しとはいえ、間近で見てしまった微笑みに心臓がバクバクとうるさく騒ぐ。
(こんな静かな店内で、心臓の音が聞こえちゃったらどうしよう)
突然、今ここに二人きりだという事実に気づいてしまい、グレースは(これは仕事、仕事です!)と言い聞かせ、なんでもない顔で微笑み返した。こんなとき感情を上手に隠せるのは、祖母から受けたお嬢様教育のたまものだ。おばあ様、ありがとう。
(私が今カフェで出しているものだってそうだわ。ここで馴染みのあるものからはじめて、少しずつ馴染んでいってもらったんだもの。新しいものが好きな王都の人でも、まったく知らないものははじめ、注文してくれなかったものね。ポテトサラダも、ピラフも。信頼を築けた今だから、新しいものでも楽しんでもらえているけれど)
グレースは長いようであっという間だった三年を振り返り、あらためて目の前のクリームに意識を戻した。
「レディ・グレース。このクリームと普通の生クリームで、扱いの違いはあるのですか?」
「扱いですか?」
思ってもみなかったオズワルドの質問に目を瞬かせると、彼は軽く頷いた。
「そう。代替品とはいえ違いはあるでしょう。それとも全く同じに使えるのでしょうか」
「違い……」
グレースは今日試したことと前世の記憶をさらった。代替クリームは、ほぼ前世でいう植物性生クリームと同じだと考えていい。
「そうですね。ミルクを嫌いな人にしか差は分からないように思いますけど、あの独特のにおいが苦手な人にはこちらの代替品のほうが喜ばれると思います」
「なるほど。僕の知り合いでもミルクが苦手な人がいますよ。そういう方がクリームを楽しめるなら喜ばれるかもしれませんね」
オズワルドが優しく目を細めるのを見て、グレースはどぎまぎしながら視線を下げた。薄く色のついた眼鏡越しとはいえ、間近で見てしまった微笑みに心臓がバクバクとうるさく騒ぐ。
(こんな静かな店内で、心臓の音が聞こえちゃったらどうしよう)
突然、今ここに二人きりだという事実に気づいてしまい、グレースは(これは仕事、仕事です!)と言い聞かせ、なんでもない顔で微笑み返した。こんなとき感情を上手に隠せるのは、祖母から受けたお嬢様教育のたまものだ。おばあ様、ありがとう。