借金令嬢は異世界でカフェを開きます

 ***

 エミリア女王の時代は、女性躍進の時代とも呼ばれている。
 女性の服からコルセットが消え、窮屈さから解放された女性たちは、このころから様々な分野へと進出を始めた。
 女王の実弟であるミズリー公爵の妻が、イリシア国初の女子校リリス学園を設立したのもこの時代だ。

 貴族の女性であっても、幅広い勉学に加え基本的な家事を学ぶことができる。学生の自立をモットーとしたこの学園は、のちの学校制度の手本となった。今や、学生の必修科目になっている「そろばん」は、このミズリー公爵夫人の発案であることは言うまでもない。

 もしもリドロンを訪れる機会があったなら、ぜひ「カフェ・レディ・グレース」を訪れてほしい。ロマンティックなあなたならご存じだろう。ミズリー公爵夫人と同じ名を持つこのカフェこそが、夫人がまだ伯爵令嬢だった時代に出資して開いたカフェであり、お忍びで訪れていた公爵と夫人が、互いの正体も知らぬまま恋に落ちた場所だということを。

 カフェは今では珍しくもない憩いの場だが、実はコーヒーと軽い食事を楽しめるこの手の飲食店は、この店が最初だと言われている。ジェニシア様式の洗練されたこのカフェ・レディ・グレースは今も健在で、当時のメニューを味わうことができるのだ。

 なお、ミズリー公爵夫人と初代店長であったグレースを同一視される声もあるが、時代背景を考えると別人と考えるのが無難だろう。諸説あるが、ミズリー公爵夫人の父方の又従妹(はとこ)であり、婚約者を亡くした後生涯独身を貫いた男爵令嬢、グレース・アンではないかという説が有力だ(なお、カフェ店長だったグレースは、今もベストセラーとして名高い「グレースのレシピ本」の著者でもある)。

 様々な出会いを生み、はぐくんだ「カフェ・レディ・グレース」。
 地元では今も、良い出会いが訪れる幸運の場所として愛されているこの場所で、ぜひ薫り高いコーヒーを味わってほしい。
 あなたにもきっと、素敵な出会いが訪れることだろう。

Fin
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