長い春の先にあったのは
私が首を傾げつつパソコンと向き合っていると、「先生〜!!」とはしゃいだ様子で今度は藁科(わらしな)さんが話しかけてきた。藁科さんは五年目になる女性看護師だ。彼女は一ヶ月ほど前、付き合っていた恋人と結婚した。

「先生、聞いてくださいよ〜!!結婚式場決めたんです!!挙式場も、披露宴会場も、何もかもすっごく綺麗で!!ウェディングドレス選ぶの楽しみなんですよ〜!!私、子どもの頃からずっとプリンセスラインのドレス着たくて〜!!」

ものすごい勢いで藁科さんは喋り出す。結婚式を挙げるのがよほど嬉しいようだ。藁科さんの話を聞きながら、私の頭に仁くんの顔が浮かぶ。すれ違ってばかりの生活だけど、仁くんは将来のことをどう考えているんだろう。

(もしも結婚するなら、私は仁くんがいいな……)

将来のことなんてまだ何も話したことがない。仁くんとはもう数週間、顔を合わせて「おはよう」すら言えてないから。

もしもの想像を頭の中でしてしまう。仁くんと結婚した未来だ。

広い庭のある家を建てて、二人でしてみたいと話していた家庭菜園を楽しむ姿が浮かぶ。大きく実ったね、なんて話しながら採れた野菜を使って二人が好きな料理であるカレーを作って食べて……。

(そんな未来が、本当になったらいいな……)

頰が赤く染まっていくのを、体温の上昇と共に感じた。
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